先ず「契約が成立するとはどういうことなのか」について考えましょう。
例えば売出中の建売住宅があり、「よし、場所もいいし建物もよさそうだし購入しよう」という買手の申込に対し、
売手の「ありがとうございます。それではお売りします。」という承諾によって、契約は成立します。
即ち、申込と承諾が客観的に合致したときに売買が成立するのです。
この申込とは、相手方に対する契約を成立させてほしいという意思表示で、一方承諾は申込に対して契約を成立させようとする意思表示であり、それぞれ相手方の受領を要するものです。
ところで申込と似て異なり、混同されるものに「誘引行為」があります。
例えば、アパートの一室の窓に「貸室あり」の看板広告のように、相手方(アパートを探している人)の借りたいという意思表示をまって、更に家主おいて考慮の余地を残すような場合における「貸室あり」の広告行為が誘引行為といえます。
このときの「貸室あり」の広告は、借手が「ここを借りよう」と言っても、それを承諾として契約が成立するものではありません。
借手が「貸室あり」の広告を見て「貸してください」と申込むのを待って、借手の条件を聞いた上で、貸手が承諾するか否かを決するものなのです。
つまり「貸室あり」の広告は、貸室の申込を誘う・促すだけのものなのです。
イメージとしては、商店の店頭に置いた酒類・煙草でしょうか。買手が一見して中高校生であれば商店主は売る訳にはいきませんよね。